2023/08/17 12:00

Smartrench です。


今回は、拒絶理由通知を受けたときの審査官が考える当業者の容易想到の論理と、
出願人が応答文で説明する際にありがちな当業者の容易想到の論理の違いについて書いてみます。

拒絶理由通知で一般的に採用される理由として、新規性(特 29条第1項)、進歩性(特 29条第2項)などを
よく見かけると思います。
新規性は、審査の対象となっている出願と、それよりも先に出願されている先行文献に記載の発明が
同一の場合に適用されることはご承知のとおりです。
 また、拡大先願規定(特 29条の2)の場合でも、発明が同一であれば適用されますよね。

そして、問題は、進歩性の適用の場合です。
例えば、主たる先行文献(主文献:引用文献1)と、当該出願の発明を比較検証した際にその発明と審査対象の
発明に技術差異が認定され、その差異を埋める先行文献(副文献:引用文献2)が組み合わされます。
埋めるための先行文献は、1件とは限りません。
この組み合わせを検討する際に審査官は、審査基準に沿って審査をしていくわけですが、
組み合わせには、ご承知とは思いますが組み合わせるための『 動機付け 』という考え方が必要になります。
そして、組み合わせた後、よく使われるセンテンスが
『 当業者であれば容易に想到することができた発明である 』という文章です。
当業者、所謂、当該技術分野の専門家という意味において、この2つの先行文献を見れば簡単に
思いつくでしょ! という審査論理を使って拒絶理由が構成されます。
分からない部分を包含しているかのような文章であり、ここに反証する隙間ができると考えています。

対して、この拒絶理由通知を受けた出願人の対応としては、
先ず、審査官が構成した拒絶理由に妥当性があるのか? というところを確認します。
次に、当業者の容易想到が本当に可能であったかどうかを確認していきます。

そして、確認の結果、審査官の論理に反論することを決めたとします。
ここから、当業者としての反論を論理的に構成しないといけないわけですが、ここに
落とし穴があります。

それは、当業者として知っていて当たり前ということを気が付かずに応答の内容を構成してしまうという
ミスです。
出願時点での技術常識的に考えて・・・という具合に記載したことはありませんか?
また、これぐらいは分かるだろう! という程度の文章を書いてしまい、気が付くと論旨が整って
いないことはないですか?

例えば、金属に対して化学的処理をする発明の場合、処理の段階ごとに説明が必要なところを
総称した呼び名で記載し、実は、必要な処理を説明できていない場合はないでしょうか。
総称として “ **処理プロセス ” などと記載していませんか?

ここで注意すべきことは、出願人側(発明者 複数の場合、代理人も含む)は知っているつもりで
発明の技術差異について説明してはいけない! ということだと私はいつも念頭に置いています。
なぜなら、この応答文を読む側は、審査官であり『当業者ではない!』ということです。

間違っても審査官が劣っているということではありません。 非常に優れた方々であると考えています。
しかし、優れていても分からないことはある! ということであり、その部分を詳述すると、
逆に直ぐ理解を示していただける方々です。
これ! 案外 皆さんやっていませんか?

以前のBlogで ” 審査官の用意した土俵に上がるな ” と書きました。
土俵に上がるのではなく、冷静に見極め土俵を作るぐらいの気概を持ってください。
そうすると権利化の道が開けるかもしれません。

今回書いたことは、私の経験則によるところが大きいです。
人それぞれ意見はあると思いますので、お気兼ねなくご意見等いただけると嬉しいです。
よろしくお願いいたします。

次回は、また、違ったネタを探して記載してみます。