2023/08/31 12:00

Smartrenchです。


今回は、特殊な出願として国内優先権を使った面白い事例について、出願・権利化の流れなどを
取り上げてみます。

ある企業(わかる人にはわかるかも 汗💦)で開発されている技術に関して特許出願を検討する中で
想定していた性能や作用・効果の検証が不十分だけど出願を早期に完了したい! 
そのため原出願が完了した後、検証を進め国内優先権の利用と、その内容の検討が始められました。

しかし、後の出願の前に国内優先権主張をする必要性について再検討が始まりました。
理由は、検証結果を補填することに変更は無いが、基本的構造とその制御について国内優先権主張を
する必要が有るか? というものです。
原因は、当該装置の発表と、客先への納入が前倒しになったことだったようです ?

その後、この出願人は原出願に出願審査請求を行い、権利化を進めることにしました ?
この時点で、権利化に進めるのであれば国内優先権主張出願を実施しない出願人もいらっしゃると
思いますが、あえて国内優先権主張出願で検証結果を基に技術の補填を実施したようです。
当初の出願の【特許請求の範囲】には技術の基本的構造とその制御方法が入り、後の出願では検証結果を
基に補強した内容が入れられたことになります。

通常は、原出願が完了した時点で出願日が確定しており、国内優先権主張出願を行ったとしても
原出願日が優先日とされることは、みなさんご承知のとおりかと思います。
他にどのような理由があったかまでは把握していません。

ここでは、国内優先権主張の基礎となった出願は、原出願の日から1年4か月でみなし取下げ
となるはずのところ、庁審査に係属し審決が出たため、みなし取下げになりませんでした。
( 詳しくは、特許法 第 42 条第 1 項、特許法施行規則第 28 条の 4 第 2 項をご確認ください。 )

一方で、国内優先権主張出願は? というと当然に権利範囲の併存は認められませんので
後の出願審査請求の際に【特許請求の範囲】を変更いたしました。

この出願の概要は以上のとおりですが、考えようによってはメリットがある面白い出願だと
思いました。

私が考えるメリットは、
 ・原出願で基本的構造や制御を権利化に進めることで検証を待たずに出願できること。
 ・国内優先権主張出願では、検証中に新たに開発された技術も権利化に進められること。
 ・当然に優先日が遡及するため、後出しじゃんけん的な効果が得られること。
  ただし、当初出願内容と、国内優先権主張出願で記載する技術に明らかな単一性違反などが
  あれば別の問題を含むことには注意が必要と思います。

そして最大のメリットは、実証実験などの検証を進めながら不具合があれば改善し、その改善を
含めて新たな出願として国内優先権主張出願をすることが可能という点です。

また、上記事例では説明していない、早期審査の組み合わせたを以下に記載します。

例えば、国内優先権主張出願と、国際優先権主張出願を行う場合について
1.原出願(国内とします)と同時に出願審査請求を行う。
2.出願以前からの開発を継続しつつ、検証を進め、出願から8か月ぐらいで目処をつける(予定)
3.検証に目処がついたら早期審査に変更し、同時に国内優先権主張出願(後の出願)を行う。
  このとき後の出願の【特許請求の範囲】も補強しておくことをお勧めします。
  補強の基本的な考えとして、原出願の特許請求の範囲を前提とする内容が良いかもしれません。
4.原出願の審査結果の通知(申請から2~3か月と想定)を受けて権利化の目処を確認し
  権利化に進める。その一方で権利化の目処がついた原出願の内容を国際優先権主張出願に反映する。
 (反映しない場合でも出願先国での審査の際に補正ができますから出願各国での権利範囲の乖離を
  防ぐことは可能と思いますが、国によっては後の補正期間に制限のある国もあるので注意が必要です)
5.国際優先権主張出願(原出願から1年以内)を行う。
  パリルートによる出願と、PCT出願の2つの選択肢がありますが、国内での権利化目処を反映
  している場合、追加でPPH(特許審査ハイウェイ)制度を活用するのも権利化の確立を上げられますので
  良いかもしれません。
  ただ、この制度もメリット&デメリットがありますので注意が必要です。

以上、つらつらと書きましたが、当然に手続費用も高額になりますので、あくまで考察としてお読みください。

次回は、もう少し複雑で特殊な出願を書いてみます。