2023/08/31 12:00

Smartrenchです。


今回は、時間が有ったので別のテーマをもう一つ!
特許法では、出願人のために 『新規性喪失の例外規定(特許法 第30条)』が設けられていますよね。
この制度は、

特許出願より前に公開された発明は原則として特許を受けることはできません。しかし、刊行物への論文発表等
によって自らの発明を公開した後に、その発明について特許出願をしても一切特許を受けることができない
とすることは、発明者にとって酷な場合もあり、また、産業の発達への寄与という特許法の趣旨にもそぐわない
・・・
という説明がなされています。
そして、例外規定を適用するためには、
(1)出願と同時に、発明の新規性喪失の例外規定の適用を受けようとする旨を記載した書面を提出し、
(2)出願から30日以内に、発明の新規性喪失の例外規定の適用の要件を満たすことを証明する書面を提出する。
と説明がされています。
(特許庁 令和3年10月1日 発明の新規性喪失の例外規定の適用を受けるための手続きについて より)

また、特許出願前に自らが公開してからの例外期間が1年間となったことは、みなさんご承知のとおりと思います。
これは救済制度ですが、特許法 第29条の2『 拡大先願 』に対する手当がなされていないと常々思っています。

例をあげて具体的にご説明すると
 1.発明が完成し、特許出願を検討中に展示会への出展が決まった。
 2.展示会の開催までに出願が間に合わないため、『発明の新規性喪失の例外規定』の適用を受けることにした。
 3.展示会では、新規発明を使った製品とそれに使われている技術へたくさんの質問が寄せられた。
 4.展示会も終了し、特許出願の準備を整えることができ、約1か月後に特許出願を完了しました。
 5.そして、1年6か月後に出願公開され、この時点で権利化に進めることにして、出願審査請求を行いました。
 6.しかし、審査が始まると同一の発明が本願よりも先に出願されており、第29条の2の適用により
   拒絶理由通知が届きました。 引用された先行文献を確認すると全く同一の発明でした。

本願は、拡大先願規定により特許が取れなくなり、先願は、本願の新規性喪失の例外規定で権利化できなくなる 
という困った状況になるわけです。

現在、展示会も国際化しており、国内を始めとしていろいろな国の方々が来訪されます。
このような状況では折角苦労して開発した技術を盗用されてしまうリスクが高まっているように思えます。
できる範囲で対応するためには、『 自らが公開する前に出願する!』 ことが大事かと思う次第です。

ちなみに、私も早期審査を請求した際に受領した拒絶理由通知の最後の方に以下のような内容がありました。
(結果的には違いましたが・・・)

拒絶理由通知書(特願****ー******)
・その他の留意事項  この出願に関する先行技術文献の調査を行ったところ、上記文献の他に、後に 出願されると特許法第29条の2の先願となる未公開の出願を発見しました。こ のため、意見書等が提出された結果、上記拒絶理由が解消されるとの見込みが得 られた場合、審査を一時保留することがあります。なお、審査を一時保留する場 合は、当該未公開の出願が出願公開された後(平成**年**月頃の予定)に、
改めて拒絶の理由を通知します。

そして、約2か月半後に

審査官通知(その他の通知)(期間無)
標記の特許出願に関する先行技術文献の調査を行ったところ、後に出願公開さ れると特許法第29条の2の先願となる未公開の出願を発見しました。このため 、現在、審査を一時保留していることを参考までに通知します。  なお、当該未公開の出願が出願公開された後(平成**年**月頃の予定)に、 改めて拒絶の理由を通知します。

結果としては、幸いなことに無事に権利化に進めることができましたが、いろいろな
法制度を活用し、苦労して権利化した思い出があります。

次回は、また違ったテーマで記載してみます。