2023/09/21 12:00
Smartrenchです。
今回は、審査段階で権利化のために意見を述べたことによって権利範囲が限定解釈されかねない
ということについて書いてみます。
審査を受け拒絶理由通知を受けた際、応答する内容を検討するときに最も注意するのは
みなさんもご承知のとおり、権利範囲が減縮することになってしまわないか!
という点かと思います。
また、国内出願と外国出願の【特許請求の範囲】の乖離にも注意されると思います。
特に、応答内容を検討する段階で引用文献と、審査される出願に技術的差異が無い
場合には、応答する内容に困ってしまうことがありますよね。
このような場合、例えば
1.出願明細書の中から補正ネタを探して最小限の減縮を行うこと(これが一般的かな?)
2.出願明細書には、具体的な記載は無いものの、技術を暗に示す内容の部分を抜き出し
明細書に無い技術内容で補正し意見を述べる場合
などがあると思います。
ここで注意することとして、明細書に具体的な記載がない技術について説明し、出願時点での
技術常識という説明をしてしまうことです。
以前も書きましたが特許庁の審査官は当業者ではありません。 なのに出願時点での
当該技術分野における技術常識という前提を基に説明してしまうことです。
この場合、審査基準に沿って審査を行う審査官にとっては明細書に記載のないことを意見書に
記載しているという印象にならないでしょうか?
そうすると、補正の不備となり補正却下の処分により拒絶査定 となる可能性があります。
しかし、運よく補正が認められた場合に補正内容を説明した意見書の内容が権利範囲に
思いもよらない影響を与えることがあります。
つまり、補正した内容を説明する意見書の中で、
*物の発明の場合に例外(例えば、材料など)を設けてしまう
*製法の発明の場合に限定的な製法について記載してしまう
*方法の発明では、例示している方法を限定して狭くする
など、先行文献の回避に注力することによって実は権利範囲が狭くなっていることに
気が付いていないことがないでしょうか?
このような場合、下記のようなデメリットの可能性が出てしまいます。
1.他社が技術回避することができるようになり、後願を出される可能性がある。
2.また、権利行使する段階でも相手が回避しやすくなってしまう。
など、思いもよらない影響を受けることがあります。
一度、審査への応答で意見をした内容は、記録として残り、上記のデメリットを
生んでしまう可能性があります。
これが ” 包袋禁反言の法理 ” という考え方です。
特許庁では、紙の出願の時代、出願した書類等を ” 包袋 ” という袋にいれて管理
していたため、その名残だと聞いています。
その中に、権利範囲を減縮するような出願人の意見が入っていると
審査段階で出願人自らが主張しているので、単に言っただけとは扱われない
ということになります。
ここまで、ご説明すればお気づきの方もいらっしゃると思いますが、自分が
第3者から権利行使を受けた場合には、包袋に入っている意見書・補正書などを
確認してみてください。
権利範囲の抜け道が見つかる可能性があるかもしれません。
今回はここまでにしておきます。
次回、面白いネタがあれば書いてみます。