2023/10/12 12:00

Smartrenchです。


今回、非常にレアな事例について書いてみます。 

ある会社が出願・権利化を進めていました。 審査で最初の拒絶理由通知を受けたので意見書、
補正書を準備し、応答を行いました。
再審査が行われましたが 拒絶理由を解消していない! という結果になり、再度、拒絶理由
通知が送達されました。同様に意見書、補正書で対応しましたが審査の結果は同じで、
やはり拒絶理由を解消していない! という結果になってしまい、努力の甲斐なく拒絶査定に
なりました。

この特許出願は重要な位置づけであったため、行政不服審査法に基づく拒絶査定不服審判をする
ことにしたそうです。 その際、アドバイスとして上申書の提出以外に分割出願をお勧めしました。

そして、ご存じとは思いますが、審査を担当した審査官が ” 前置審査 ” を行いましたが
前置審査が解除され、前置報告がなされました。
出願人としては、権利化したいため、再度、上申書(意見書と同じような内容)を提出しました。

ここまでくると出願当初の【特許請求の範囲】からかなり権利範囲が変動している状態です。
権利化できれば良いですができなければ 審決に対する取消審判を請求することになります。

しかし、ここで立ち止まって考えてほしいことがあります。 それは、分割出願の権利範囲への
影響です。

本来、権利化した後に分割出願する場合には、権利範囲に記載のない隠れた発明を抜き出して
権利化するという意味と、権利化した当該特許に異議申立や無効審判をぶつけられた場合でも
逃げ道を作り、第3者に対して牽制する作用・効果を継続させることができることです。

ところが、原出願で権利化を進める中で、明細書に記載していた補正ネタを使い果たし、
その結果、権利化ができなかった場合、分割出願の特許請求の範囲を構成できない事態に
陥る可能性ができてきます。

いろいろな策を講じることも重要ですが、あるラインを超えた場合には ” 損切り ” という
考え方も必要な選択肢ではないでしょうか。

また、上記とは逆にある程度の補正書、意見書で、めでたく特許査定になったとします。
念のため、登録料を納付する前に分割出願をした後、異議申立期間も過ぎたので一安心!
ですが、分割した出願について見落としがちなことが二つ。

1つは、原出願と同一の権利範囲は併存できないということです。
つまりは、分割当初は特許権を潰されそうになっても、まだ戦える! という表明を
しているのですが、その心配が無くなった場合には原出願と異なる権利範囲を構成
しないといけないということです。

そしてもう一つは、通常の法定期間を期限一杯まで使って対応することをお勧めします。
なぜなら、まだ潰される方法が存在するからです。 もうお分かりかと思いますが
”  無効審判  ” によって潰される可能性が残るということです。

分割出願をそのまま放置してみなし取下げにした後に無効審判をされると、原出願が
生き残れなかった場合には折角の特許技術が ”  一般化した技術  ” となってしまいます。

一般的に考えるとここまで来るのにはかなりの労力と費用が掛かることに加え、
当事者対立状態になるため、おいそれと無効審判を提起する人はいないと思いますが。

次回、また違うテーマで書いてみます。